社会福祉法人仙台市社会福祉協議会 佐藤俊宏事務局長(元仙台市職員)インタビュー
社会福祉法人仙台市社会福祉協議会佐藤俊宏事務局長へのインタビューは2020年7月14日に実施しました。佐藤氏は東日本大震災発災当時仙台市職員として、戸別訪問により避難者世帯の状況と課題を、4分類*1を用いて把握を行い、被災者の状況に応じた支援へとつなげました。インタビューでは、4分類から見えた被災者、避難者の状況、また、活動を通じて感じた支援体制の課題への対応等についてお話をうかがいました。
今回の記事では佐藤氏からお話しいただいた内容を抜粋してご紹介します。
仙台市の特徴として、みなし仮設入居者が非常に多かった事(避難者の8割強)に加え、仮設住宅に入居した人の内3分の1が仙台市以外の人だった。市の復興計画は5ヶ年計画で策定されたが、計画期間後に被災者の生活再建をどう支援するか、何から始めたらいいか、が策定時点ではわからなかったので、平成23年7月頃から被災者世帯に対して一軒一軒戸別訪問で世帯状況を調べた。調べる中で、多様な被災者への支援は、住まいの再建だけでなく、日常生活への支援も必要であることが見え、社協、支援団体、保健師などがメンバーとして参画するワーキンググループの体制を組み、気になる被災者等の情報共有の場とした。情報を集約できた点、方針を全員で確認できた点が連携して取り組む上で非常に良かった。戸別訪問から、平成26年の段階で約35%に集中して支援をすれば大丈夫だということがわかり、また、それぞれの分類によって支援の仕方も違うことも、戸別訪問の結果の分析でわかり、それぞれの状況に応じた伴走支援へとつながった。全戸訪問はシルバー人材センターとの協働で実施し、毎日の訪問結果を、夕方に市職員がヒアリングしてデータベースに入力し、情報共有しました。市職員が定性的なものも含め被災者の様子を知っている状況をつくることができた。行政のマンパワーは必要で、慣れていない業務や対応には知見を持った人たちが応援に入る仕組みが必要になる。シルバー人材は60才以上なので、被災者とうまく話ができるという効果も期待した。
行政の動きとして、罹災証明は様々な支援制度に出てくるので、できるだけ早く簡潔に発行した方が良いというのが今の流れ。全国一律の基準で出してもよいが、罹災証明を要件とした支援制度ごとに、罹災証明に所得要件を付けくわえるなど制度支援において考えれば良い。被災者にとって罹災証明は早く欲しいものなので、行政側も簡便に終わらせないといけないが、罹災証明を発行する事務は膨大で市町村はどこも罹災証明を発行するのが最も大変だった。災害時の職員派遣が多くなる二つの要素は避難所運営と罹災証明の発行事務に人員と時間が必要になるから。
例えば、仮設住宅の残置物は、月一回仙台弁護士会と打ち合わせを持つなど、弁護士からアドバイスを受けて対応した。社会保障の支援制度は揃ってきたと感じている。支援をその人に合ったようにコーディネートしてくれる人がいればいいと思う。小さい町村の場合、応援職員がいっぱい来ても、町の方でコントロールできなくなってしまうので、首長直轄でリーダーシップを取れて全体を見渡せる指揮官みたいな人が何人かいるといい。現場の人と、コントロールタワーのような所が分かれていないと機能しないのではないかと思う。
以上、佐藤俊宏氏のインタビューから一部抜粋しました。
佐藤氏からは、行政での経験を通じて、災害対応のマルチセクター化により得られる効果について、現在行政に求められている諸手続きについて、セクターを超えた連携により、行政側の負担も軽減されることへの示唆をいただきました。
*1 世帯の支援必要度を、住まいの再建の必要有無、日常生活の自立性の高さを軸として、分類1:支援がいらない世帯(生活再建可能世帯)、分類2:日常生活には支障がある世帯(日常生活支援世帯)、分類3:住宅再建が難しい世帯(住まいの再建支援世帯)、分類4:集中的な支援が必要な世帯(日常生活・住まいの再建支援世帯)、の4分類で分類を行った。平成26年の段階で65.7%が分類1に分類された。
- 投稿者: 311kaerukai
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