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弁護士法人芦屋西宮市民法律事務所 津久井進氏 インタビュー

津久井氏へのインタビューは2020年9月7日に実施しました。

津久井氏のご経歴*1としまして、1993年3月に神戸大学法学部をご卒業後、1995年3月に司法修習終了、2002年4月に弁護士法人芦屋西宮市民法律事務所を設立され現在に至ります。弁護士としての主な取り扱い分野は個人の生活に関わるあらゆる事件、中小企業に関するあらゆる案件を手がけ、東日本大震災をはじめとする自然災害等の被災者支援にも携わっておられます。

インタビューは、災害救助法の成り立ちの振り返り、災害対応のマルチセクター化の前提として現状の災害対応を担っている主体の確認、マルチセクターでの災害対応を行う際に多セクターが動きやすくなる体制づくりなどの話題を中心に行いました。

今回はインタビューの中から、被災者支援のマルチセクター化での対応についてお話しいただいた内容を抜粋して紹介します。

今年の新型コロナウイルス感染症への対応で感染症法に基づく制度や施策で新たに作られたようなものでも実際は既存の法制度を活用により対応している場合が多く、熊本県人吉市で発生した豪雨災害による避難所を開設する際、災害発生後2日で新型コロナウイルス感染症対応のため仕切りや簡易ベッドなどを導入した欧米並みの避難所をつくることができ、やればできるということがわかりました。災害救助法も法律改正においても災害での経験を踏まえて変えていけると良いと考えます。

マルチセクター化や社会保障のことを確論的に生活困窮者自立支援法に入れていくと簡単に進められると思います。ただし、災害対応の活動をしている人でも福祉の領域を知らない人は一定数存在しているので、災害救助法に社会保障のフェーズフリー化を組み込む際の留意点としてほしいです。

マルチセクター化については実際に運用する際にどのような方法で取り組むかの具体方針の検討がこれから一層必要になると思います。現行の法律に沿うなら日本赤十字社が災害救助にあたる形で、現在は医療部門だけなので、災害救助の部門をつくり、予算を付けて災害時に動き、その下に各団体や組織が参画する体制になると考えられます。

また、都道府県と民間等における災害時の協定が進んでいない現状を踏まえ、災害時の権限を都道府県から市町村に全て卸すことを検討してみることも良いと思います。市民生活を支援していくという視点では都道府県よりも現地である市町村の方が分かっているので、市町村が支えていくことが望ましく、国が予算を出すことを明言することで、市町村が県を通さずに動けた方が対応を早めることができます。もし、災害経験が無いまたは少ない市町村の場合は災害に関する対応の責任は持ってもらいながら、マルチセクター化により民間が被災者支援を行いながら災害対応のノウハウが行政に蓄積されていくと良いと思います。

以上、津久井氏のインタビューから一部引用しました。
津久井氏へのインタビューにより、当会で検討を進める災害救助法や関連法の改正において、社会保障のフェーズフリー化を災害対応に組み込む際に実際に現場で対応する団体や専門家における福祉領域への意識醸成、マルチセクター化を実現した場合の運用で市町村行政との連携、災害対応の権限を都道府県から市町村へ移行するなどの検討が必要であるという示唆をいただきました。

*1:弁護士法人芦屋西宮市民法律事務所HP 弁護士紹介
https://ancl.gr.jp/top/staff/%E6%B4%A5%E4%B9%85%E4%BA%95-%E9%80%B2/

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