同志社大学社会学部 立木茂雄教授 インタビュー
立木氏へのインタビューは2020年9月7日に実施しました。
立木氏*1のご専門は福祉防災学・家族研究・市民社会論で、特に大災害からの長期的な生活復興過程の解明や、災害時の要配慮者支援のあり方など、社会現象としての災害に対する防災学を研究されています。
2011年3月の東日本大震災時は、直後より宮城県名取市に入り、長期的な生活再建支援に関わられました。また、東北福祉大学や仙台市、仙台市障害者福祉協会と共同で、障害のある仙台市民の被災から復旧・復興における生活課題の解明と具体の支援のあり方に関する研究に取り組まれました。
インタビューは、災害対応のマルチセクター化の前提として現状の災害対応を担っている主体の確認、マルチセクターでの災害対応を行う際に多セクターが動きやすくなる体制づくりなどの話題を中心に行いました。
今回はインタビューの中から、被災者支援のマルチセクター化での対応や平時からの専門職による災害時ケアプランづくりを通じた災害対応を被災後と連結する必要性についてお話しいただいた内容を抜粋して紹介します。
日本は障害者の権利条約に批准しており、条約の第11条で緊急事態における安全の確保とあり障害者に関連する分野では共有されていますが、防災分野での周知はまだ十分ではありません。障害者のことは福祉分野でのみ扱われるという見方がありますが、障害者の権利を保証するというユニバーサル(普遍的)な視点を盛り込み、憲法の基本的人権(とりわけ法の下の平等を実現するための合理的配慮提供義務)に関することとしてとらえ、福祉分野以外でも扱われてほしいと思っています。
21世紀の災害対応として、被災者支援の社会保障化とマルチセクター化は並行して扱われるのもので、社会のありようの変容として語られると考えられ、社会変化を踏まえた体制に変えていく必要があると考えます。
今回、3.11から未来の災害復興制度を提案する会(以下、提案する会)で検討している改正案は復興の制度について考えていますが、私としては災害対策を平時のうちから取り組むという立て付けにしてもらうといいと考えています。
たとえば、平時にケアマネージャーが介護保険制度のケースマネジメントを考えるときに、災害時に備えたケアプランづくり、また被災後の生活再建にむけたケースマネジメントも合わせて考えておくことで、同じ生活者への平時と災害時の支援を切れ目なく連結させ、災害後のケースマネジメントに基づいて必要な報酬が払われる仕組みになると良いと思います。被災後だけでなく平時から対応する体制があることで、災害時にマルチセクターで対応することが可能になると思われます。災害対策基本法の見直しで対応できる部分もあると思います。
復興制度だけを視野に入れた法改正を考えるのではなく、平時からの防災の視点で事前の対策づくり、事後の対応ということが一気通貫で行われる方向で法改正を考えられると良いと思います。
以上、立木氏のインタビューから一部引用しました。
立木氏へのインタビューにより、当会で検討を進める災害救助法や関連法の改正において、災害発生後の対応だけでなく、災害の無い平常時にも日常生活で支援を必要とする人への対応がきめ細かくなされることで、災害発生後にも切れ間の無い支援を続けるための仕組みづくりが肝要であるという示唆をいただきました。
*1:立木茂雄研究室 略歴(https://www.tatsuki.org/_private/BriefProfile2.htm)
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